クラウド・バイ・デフォルトの原則とは?
― 日本政府も採用する、未来基準のIT戦略 ―
1. クラウド・バイ・デフォルトとは何か?
**クラウド・バイ・デフォルト(Cloud by Default)**とは、
新たに情報システムを構築・更新する際に、
クラウドサービスの利用を第一選択肢とする原則
のことです。
従来のようにオンプレミス(自社サーバー)を前提とするのではなく、
- まずクラウドを検討する
- 合理的な理由がある場合のみオンプレミスを選択する
という考え方に転換するものです。
これは単なるITトレンドではなく、
組織の持続可能性を高めるための構造的原則です。
2. 日本政府も正式に採用している原則
日本政府は「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」において、
クラウド利用を原則とする方針を明確にしています。
目的は以下の通りです:
- デジタル化の加速
- システムの柔軟性向上
- セキュリティ水準の強化
- コスト最適化
- 災害耐性の確保
現在、国・自治体では「ガバメントクラウド」の整備が進められており、
行政システムは原則クラウド基盤上で構築される方向へと進んでいます。
つまり、
クラウド・バイ・デフォルトは国家レベルの戦略思想
なのです。
3. なぜクラウドが“前提”になるのか?
① 変化に強い
市場環境・法制度・セキュリティ脅威は常に変化しています。
クラウドは:
- 即時スケール可能
- 自動アップデート
- グローバル展開対応
- 高可用性設計
を前提としています。
変化の激しい時代において、
固定的なIT基盤は経営リスクになります。
② セキュリティ水準が高い
主要クラウド事業者は、
- 国際規格準拠(ISO、SOCなど)
- 常時監視体制
- 高度な暗号化技術
- 世界規模のセキュリティ投資
を実装しています。
自社単独で同等レベルのセキュリティ体制を構築することは、多くの企業にとって現実的ではありません。
③ 経営の柔軟性を高める
オンプレミスは:
- 初期投資が大きい
- 保守費が固定化
- 設備更新の負担が重い
クラウドは:
- 従量課金制
- 初期投資を抑制
- 迅速な拡張・縮小
つまり、
固定費から変動費へ
重たい資産から、しなやかな構造へ
経営の機動力が大きく向上します。
4. 重要な誤解:クラウド=安全ではない
ここで重要なのは、
クラウドを使うことと、クラウドを正しく使うことは別問題
という点です。
クラウド・バイ・デフォルトは、
「丸投げ」ではありません。
必要なのは:
- 適切なアクセス管理(IAM)
- 多要素認証
- 権限の最小化
- ログ監視
- 暗号化
- バックアップ設計
- ゼロトラスト思想
クラウドは強力な基盤ですが、
設計を誤ればリスクは拡大します。
原則とは「使うこと」ではなく、
前提として設計することです。
5. 経営戦略としてのクラウド・バイ・デフォルト
この原則はIT部門の話ではありません。
経営にとっては:
- DX推進の土台
- グローバル展開の前提条件
- 災害BCP対策
- IPO水準の内部統制構築
- リモートワーク体制整備
つまり、
未来に耐える企業構造を作るための思想
です。
ITの選択ではなく、
構造の選択なのです。
6. 民間企業が今すぐ考えるべきこと
クラウド・バイ・デフォルトを実践するために必要なのは:
- 経営層の理解
- セキュリティ設計の内製知識
- 社員のクラウドリテラシー教育
- 段階的な移行戦略
- 定期的な監査と改善
クラウドはゴールではなく、スタート地点です。
7. 結論
クラウド・バイ・デフォルトとは、
「変化の時代において、未来を前提に構造を選ぶ」
という意思決定の原則
です。
日本政府も採用し、
多くの先進企業が実践しています。
問われているのは、
- クラウドを使うかどうか
ではなく - 未来基準で設計しているかどうか
です。